D511002戦時型 坂町機関区(長野工場)タイプの小加工
太平洋戦争末期、北海道産の石炭の海上輸送が困難となり、日本海縦貫の鉄道輸送を増強するために大量の戦時型D51が日本海側の機関区に配置されたという記事を見たことがあります。そのせいか、SL末期の新潟地方では角型ドームのD51を見る機会が多く、戦時型D51は私にとって思い入れのある機関車のひとつです。
2年ほど前にマイクロエースから、かつて実機を見たことがあるD511002号機の製品化が発表され、大きな期待をもって発売を心待ちにしていました。しかし、いざ製品を手にしてみると、どうしたものでしょう・・・。手元にある戦時型の写真と見比べても、どうにも特定ナンバー機のモデル化とはいい難い姿です。ただ、そのスムーズな走行性能と驚異的な牽引力は特筆すべきものがありました。そこで、今回の小加工は、この素晴らしい走行性能を保ったままでプロポーションを修正することとし、例によって「Nゲージ蒸気機関車」サイトさんの記事に倣って車高を下げ、長野工場タイプの特徴を簡単に追加しました。
ポイントは下記の通りです。
 ・車高下げ+ドローバー切り詰め
 ・キャブ屋根延長(ロングルーフ化)
 ・機関士側、機関助士の旋回窓、スノープロウ
 ・蒸気排気管カバー(ランボード〜ボイラー間の覆;長野工場タイプ)
 ・ドーム前の斜めに肩を落とした手摺(長野工場タイプ)
 ・テンダ上の大型重油タンク(取替え)
 ・船底テンダの修景(底板の角度が浅いのをごまかす)
製品のD511002は酒田機関区時代という説明でしたが、当時の土崎工場出場機の特徴は何一つモデル化されていません。そこで、手元にあった坂町機関区時代の長野工場装備をしていた姿をプロトタイプとしました。
ただ、昨年末にKATOから驚異的な形態+性能+低廉価格のD51498が製品化されたため、今後はマイクロエース製品を加工する人も少なくなるのではないでしょうか。次はきっとKATOベースのD51の加工にチャレンジですね。 (2011.1.31)
動画(youtube)をUPしました。(2011.2.13)

D511002戦時型 坂町機関区(長野工場)タイプの動画

D511002の実機のイメージ  
D511002号機の坂町機関区時代の姿は、ドーム前のなで肩の手摺と蒸気排気管カバーのついた長野工場タイプです。
この後、酒田機関区へ転出し、煙室扉の下にシンダ除けのついた土崎工場タイプとなりました。

車高下げと長野工場仕様の耐寒装備を付け加えただけですが、ずいぶんとそれらしくなりました。私の老眼では多少顔が似ていなくても、ほとんどわからないのが、良かったのか悪かったのか・・・・

「Nゲージ蒸気機関車」サイトさんの記事に倣ってウェイトの上側を削ります。シリンダ前側の主台枠前端はほとんどなくなりました。今回は走行性能重視のためモーターは製品のままです。

ドローバーを切断し切詰めて補強の裏当てを付けたところです。走行性重視のために多少長めと考えていたのですが、結局実機と同じくらいになってしまいまいした。
このせいで、テンダとモーターが干渉してしまうため、給炭口を少し切詰めました。

この製品でどうしても変えたかったのがテンダと重油タンクです。石炭と一体化していた重油タンクを切り取り、プラ板で炭層底板を作って銀河の重油タンクと石炭(バラスト)を載せました。

製品の船底テンダは底板の折角が浅いためか、華奢なTR41台車と本体の隙間が強調されて、浮いたように見えることです。そこで、0.3mmの真鍮線で簡単な配管を作り、隙間を塞ぎました。

戦時型D51の船底テンダの高さは標準型よりも若干高いので、キャブ屋根の延長部は標準型よりも少し浅くなっています。
ボディーの加工はこの特徴あるキャブ屋根の延長とランボード〜ボイラーの隙間を覆う排気管カバーです。
車高下げに伴い、キャブ前面部のボイラー上部を切り欠いてモーター端子を逃がしますが、この時にキャブ高さを1mm程下げて全体の形を整えました。



塗装前の仮組状態の写真です。下手くそな加工部分が一目瞭然です。
スノープロウはジャンクボックスにあったグリーンマックスの電車用だと思います。走行性重視のため、端梁ではなく、先台車に接着しました。

今回の加工ではテンダー部分の見え方をかなり変えることができたように思います。
シリンダ上部のプラ板は削り過ぎた隙間を埋めるためのスペーサーとして挟みました。

塗装は前回と同じタミヤの艶消黒(フラットブラック)をそのまま吹付けました。今回はシリンダも塗装しています。
昭和40年当時の蒸気機関車はみな煤けていて光沢がなかったので、モデルオリジナルの半艶よりも当時の印象に近くなったように思います。
空気作用管は吹付け塗装が少し固まった時点でドライバーで削って地の色を出しましたが、中々いい感じになったと思います。昔の蒸機は空気作用管の真鍮色はほとんどわかりませんでした。

D51戦時型のテンダ上端は延長前のキャブ屋根下端よりも高い位置にきますが、製品の形がきまってきるので、このくらいで妥協しました。
不幸中の幸か、ドローバーを切り詰め過ぎたので、機炭間隔はほぼ実機に近くなりました。

1機しか購入していないので、加工の前後を対比することはできませんが、ほぼフルスケールのKATOのD51498と比べてみました。
ボイラーが若干長いのとキャブの形、煙突とドームの高さが今ひとつですが、ウェストライン(ランボードの高さ)は概ね揃っていて違和感はほとんど感じません。当初の目的であるプロポーションの改善はまあまあ成功と思っています。
モーターの飛び出しが気になりますが、機炭間隔を詰めたことによって違和感が緩和されたように思います。後は改造前にように走ってくれれば何も言うことはありません。
それにしても、KATOのD51498はあまりに完璧です。

                
このボケた写真は新潟操車場に憩うD511046[新]の後姿ですが、このカマも典型的な長野工場タイプの戦時型です。
この角度から見ると、戦時型のテンダが標準型に比べて高いことがよくわかります、
細部はあばただらけですが、長野工場タイプの戦時型D51の印象はつかめたような気がします。

非公式側ですが、ほぼ真横に近い角度ではモーターの飛び出しはあまり気になりません。汽笛は塗装後にKATOのASSY部品をつけています。
実機のD511002は砂撒管が2本のタイプなので、真ん中の1本を削ろうと思いましたが、失敗すると悪いのでやめました。

D51498との2ショットです。それにしても大した模型ですね。欲目ですが、D511002もそれなりではないでしょうか。

早速、貨物列車の先頭に立ち雪の信越線を走らせました。D51には耐寒装備がとても似合います。



模型でも雪の蒸気機関車の写真は光線の加減が難しいです。

雪がないとこんな感じです。走行写真では戦時型の船底テンダの雰囲気がそれなりに出ていると思います。

駅の中線で旅客通過待ちの貨物列車です。

夕刻の機関区機留線に連なる機関車群。昔はあちこちで見ることのできた懐かしい風景です。


D511002の動画(写真クリック)です。走り重視の成果を見てください。


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