ストラクチャー製作メモ

 扇型機関庫の製作 その1
2009.1.31 
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1.プランニング

◆コンセプト
蒸気機関車の好きなモデラーなら、誰もが大型蒸機がゴロゴロとたむろする機関区をモデル化したいと一度は思うのではないでしょうか。転車台に扇型機関庫、給炭槽とトラスのガントリークレーン、給水タンク、細かいところでは給水スポート、アッシュピット、給砂塔に点検台など、煤と油にまみれた機関区独特の匂いが思い出され、懐かしさが心をくすぐります。
かくいう私も、Nゲージならではの大型機関区の夢を追って、遠い昔にセクションを製作したことがありましたが、アトリエKの設立を機会に、もう一度新しい手法で個々のストラクチャー製作に挑戦することにしました。

丁度といっては何ですが、長い間店先から消えていたTOMIXのターンテーブルが再生産されるということなので、その第一弾がこれにマッチする日本型の扇型機関庫(ラウンドハウス)です。




 
◆イメージ
とはいうものの、扇型機関庫に関する資料(設計図類)は皆無に等しく、構造や寸法の復元は古い写真に頼るしかありませんが、鉄道趣味の写真はほとんどが車輌中心のため、周辺施設の全容がわかるようなものはなかなかありません。
唯一の手掛かりはタクトワン社の刊行する蒸気機関車の写真集で、こんなマイナーなものをよくぞ出版してくれたと感心させられますが、おかげ様で何とかイメージを詰めることができました。私にとってはかけがえのない出版社です。

扇型機関庫はその構造上の分類から、鉄骨の骨組みをスレートや木材などの外壁で囲ったものと、鉄筋コンクリート(RC)のものに大別されるようです。どれも断片的ですが、前述の写真集で全国各地の機関区の扇型機関庫を見たところ、イメージとして残ったのが直江津機関区、青森機関区の鉄筋コンクリートラーメン構造の機関庫でした。
モデルはこれをプロトタイプとして、TOMIXターンテーブルに合うようにアレンジしていきます。

何故アレンジなのかというと、実際のターンテーブルの線路配置間隔が概ね中心角9°なのに対して、TOMIXは15°もあるため、現実的なターンテーブル〜機関庫の距離を確保すると、一線の庫の間口幅が大きくなり過ぎるので、全体の寸法を調整する必要があるからです。
 
直江津機関区 1969
 

直江津機関区の扇型機関庫は中心角180度以上もある立派な機関庫でした。
転車台を囲むように22線の鉄筋コンクリート造りの機関庫があり、さらに4線の鉄骨の検修庫が続きます。
鉄筋コンクリートの場合はたいていが柱と梁ががっちりと固定されているラーメン構造で、鉄骨製に比べて門構の柱が太く立派なのが外観上の特徴となります。







模型の場合、扇型機関庫らしさを出すためには、中心角は最低でも90°以上欲しいところですが、本物のように180°以上もあれば、返って機関車が見えにくく場所もとるため邪魔になります。
昔の作品もそうでしたが、中心角はこの中間をとって135°としました。TOMIXのターンテーブルでは9線分となり、まずまずの大きさになります。
ということで、早速イメージを作図してみました。


2.デザイン(設計)

◆平面寸法
TOMIXのターンテーブルはガーダー長164mm、周囲の板張りを含めると直径212mmです。また、Nゲージの蒸気機関車はKATOのC62東海型でも150mm弱ですから、機関庫の長さは余裕を含め170mm程度が最小となります。
そこで、ターンテーブルと機関庫の間隔をどの程度とするかでジオラマの大きさが決りますが、置き場を考えれば、奥行きを600mm以内で収まるようにしたいものです。
プロトタイプの直江津などは、ターンテーブル〜機関庫の距離は機関車1台分くらいありそうですが、模型ではこれを広くする程、機関庫の間口が広くなり、見た目の「らしさ」が薄れていきます。逆に狭くするほど機関庫がターンテーブルに近寄り、別な意味で見た目の「らしさ」が薄れていきます。
今回の計画では、イメージ図で全体のバランスを見ながら、機関庫〜ターンテーブル間距離を10cmとしました。

 

◆機関庫構造寸法
さて、上記の平面寸法とした場合、機関庫の間口の見え方は許容範囲に収まるのでしょうか?
昔と違い、Nゲージ蒸気機関車はプラ製品でも、マイクロエース、リアルラインなど複数のメーカーが発売しています。それら最近の製品は概ね1/150の寸法となっているのですが、老舗のKATO製品はC62東海道型と96以外の旧製品が1/140で製品化されているため、機関庫に入れたときの印象がかなり違ってくるのではないでしょうか。
そこで、作図してみたのが下の絵です。
国鉄蒸気機関車の中では正面寸法(印象)が最大のD52を実物の1/150と1/140で作図し、機関庫に入れてみました。
若干の不満は残りますが、まあ、許容範囲としましょう。

 

前面の高さは開口部の1,7〜1.8倍程度の事例が多いようなのでこれに準じ、屋根は機関庫裏面に向かって下がり勾配を付けました。これで各部の寸法が決ってきます。主要部分を簡単に作図するとこのようになります。
 機関庫正面
  
 機関庫側面  
   機関庫背面

これで機関庫の形がきまりました。
次はこの寸法を基本にし、モデルの部材構成に使用可能な材料に合わせて部品図を作成することになります。

 
2009.1.31  
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